とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【数列】和分差分学2 「差分と和分は逆操作」

本シリーズの全体像や必要な予備知識をつかむために前回の記事を読んでいただくことをおすすめします。

 

math-topology.hatenablog.com

 

さて、本格的に和分差分を導入していきたいと思います。

今回は和分差分の定義と基本定理を紹介し、具体例を考えていきたいと思います。

 

 

準備

理解をするために必須ではありませんが、本シリーズの共通言語とするため、簡単に集合の用語を用いて準備します。

 

集合  \mathbb{Z}_{\geq 0} 0 以上の整数の集合とします。

このとき数列  \{ a_{n} \} \mathbb{Z}_{\geq 0} の元  n a_{n} に写す写像として特徴づけられます。

また  a_{n} は実数である*1とし, \mathbb{R} を実数の集合とします。

 

 a: \mathbb{Z_{\geq 0}} \longrightarrow \mathbb{R}

 

本シリーズは数列の表記として、  \{ a_{n} \} だけでなく単に写像として  a と書くこともあります。

また、高校数学では  1 以上の自然数で数列を定義されることが多いのですが、便宜上  0 以上の整数のほうが都合が良いことが出てくるため、単に自然数とはしません。*2

 

差分と和分の定義

数列  a について、差分  \Delta aと和分 \Sigma a の一般項を以下で定義します。

 

 (\Delta a)_{n}=a_{n+1}-a_{n} *3

 (\Sigma a)_{n}=a_{0}+a_{1}+a_{2}+\cdots +a_{n}

 

 このとき差分と和分の間に以下の定理が成り立ちます。

 

定理(和分差分学の基本定理)

 (\Sigma\Delta a)_{n}=a_{n+1}-a_{0}

 (\Delta\Sigma a)_{n}=a_{n+1}

 

(証明)

定義に従って計算すればすぐに分かります。

 (\Sigma\Delta a)_{n} \\=(\Delta a)_{0}+(\Delta a)_{1}+\cdots +(\Delta a)_{n} \\=(a_{1}-a_{0})+(a_{2}-a_{1})+\cdots +(a_{n+1}-a_{n}) \\=a_{n+1}

 

 (\Delta\Sigma a)_{n}\\=(\Sigma a)_{n+1}-(\Sigma a)_{n}\\=(a_{0}+a_{1}+\cdots+a_{n}+a_{n+1})-(a_{0}+a_{1}+\cdots+a_{n})\\=a_{n+1}

 

この定理は微分積分学の基本定理の数列版になります。

 \dfrac{d}{dx}\displaystyle\int f(x) dx =f(x)

 \displaystyle\int f'(x)dx=f(x)+C( C積分定数)

 

例(等比数列)

 a_{n}=2^{n}とおくと

 (\Delta a)_{n}=2^{n+1}-2^{n}=2^{n}

となります。

つまり

 \Delta a =a

が成り立ちます。

これは微分積分における指数関数  y=e^{x} について

 \dfrac{d}{dx}e^{x}=e^{x}

つまり微分して不変であることの類似になっています。

またこのことと和分差分学の基本定理により、

 (\Sigma\Delta a)_{n}=(\Sigma a)_{n}

となることから、

 (\Sigma a)_{n}=a_{n+1}-a_{0}

つまり

 \Sigma 2^{n}=2^{n+1}-1

を得ます。

これは等比数列の和の公式の証明にもなっています。

 

例(冪)

微分積分において、

 \dfrac{d}{dx}x^{k}=kx^{k-1} 

 \displaystyle\int x^{k} dx=\dfrac{1}{k+1}x^{k+1}+C( C積分定数)

は初歩的な計算とされますが、残念ながら数列 \{ n^{k} \}の和分差分は簡明な公式がありません。

(差分は (n+1)^{k}-n^{k} の展開をしなければなりませんし、高校数学において \Sigma n^{k} を公式として学ぶのはせいぜい  k=3 のときまでです。)

そこで、数列に適した"冪"を新たに定義します。

 

 n^{\underline{k}}=\left\{ \begin{array}{l} n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+1) \,\,\,\, (k\geq 1) \\ 1 \hspace{135pt} (k=0) \end{array} \right.

 

このように定義すると  k\geq 1 のときは

 \Delta n^{\underline{k}}\\=(n+1)n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+2)-n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+2)(n-k+1)\\=( (n+1)-(n-k+1) )n(n-1)(n-2)\cdots (n-k+2)\\=kn^{\underline{k-1}}

となり微分積分における冪の微分の結果と同様のものが得られます。

先ほどの例と同様、和分差分学の基本定理を用いることにより、数列の冪に関しても和分つまり和の計算が一般化されることになります。

すなわち

 \Delta n^{\underline {k+1}}=(k+1)n^{\underline{k}}

に対して両辺の和分を考えると、

 \Sigma\Delta n^{\underline{k+1}}=(k+1) \Sigma n^{\underline{k}}

となるので次の等式を得ます。 

 

 \Sigma n^{\underline {k}}=\dfrac{1}{k+1}(n+1)^{\underline{k+1}}

 

 言うまでもなく、これが  x^{k}積分の数列版になります。

 

例(等差数列と等比数列の積)

高校数学によく出てくる数列の差分と和分に注目します。

 a_{n}=n\cdot 2^{n} で数列  a を定義します。

このとき

 (\Delta a)_{n}=(n+1)\cdot 2^{n+1}-n\cdot 2^{n}=(n+2)\cdot 2^{n}

となります。

右辺に数列  a が現れていること(同形出現)から

 a_{n}=(\Delta a)_{n}-2^{n+1}

という式が得られます。

例のごとく両辺の和分を考えます。

 (\Sigma a)_{n}=(\Sigma \Delta a)_{n}-\Sigma 2^{n+1}

和分差分学の基本定理と等比数列の和分より

(\Sigma a)_{n}=a_{n+1}-a_{0}-(2^{n+2}-2)

右辺に  a_{n}=n\cdot 2^{n} を代入し、整理することで

(\Sigma a)_{n}=(n-1)\cdot 2^{n+1}+2

を得ます。

 

微分積分では、このことは

 \displaystyle \int xe^{x} dx

を計算するときに

 \dfrac{d}{dx}(xe^{x})=xe^{x}+e^{x}

の両辺を積分することで

 \displaystyle \int xe^{x} dx=(x-1)e^{x}+C ( C積分定数)

を得る流れと全く同じと言えます。

 

まとめ

今回は和分差分の定義と基本定理のみを導入しましたが、これらを具体例に適用するだけで様々な数列の和が通常とは異なる形で計算できました。

そしてそれぞれが微分積分と同様の計算になっていました。

さて、最後の例で紹介した積分  \displaystyle \int xe^{x} dx は高校数学で学ぶ微分積分では通常は部分積分を用います。

次回、和分差分においても同様の公式を導入し、より微分積分との共通点を感じていただきたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

 

*1:厳密には  a_{n}複素数や他の代数系にしても大きな問題はありませんが、あくまでも高校数学の延長として、本シリーズは断りがない限り実数であるとします。

*2:自然数 0 以上派」なのかどうかはここでは触れません。

*3:差分は分野によってはa_{n}-a_{n-1}で定義されることもあります。