とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【数列】和分差分学3「ライプニッツルールと部分和分」

前回、差分及び和分の定義と和分差分学の基本定理を導入しました。

今回は  \displaystyle \int xe^{x}dx のような形の和分を計算する方法を考えていきたいと思います。

記号や用語に関しては前回のものを踏襲しますので、次の記事を参考にしてください。

 

math-topology.hatenablog.com

 

 

準備

数列  a b に対して、いくつかの数列を定義します。

 k l を実数とします。*1

数列  ka+lb を以下のように定義します。

 (ka+lb)_{n}=ka_{n}+lb_{n}*2

また数列 abを以下のように定義します。

 (ab)_{n}=a_{n}b_{n}*3

さて、差分  \Delta や和分  \Sigma は実数倍や和を保ちます。*4

すなわち以下の等式が成り立ちます。

 

 \Delta (ka+lb)=k(\Delta a)+k(\Delta b)

 \Sigma (ka+lb)=k(\Sigma a)+k(\Sigma b)

 

しかし積  ab は保つのでしょうか。

まずは、積の差分を考えることになります。

 

その前に、次の数列を用意しておくこととします。

数列  a に対して、数列 \sigma a を以下で定義します。

 (\sigma a)_{n}=a_{n+1}

なお、この  \sigma は数列の実数倍や和だけでなく積も保ちます。

 

 積の差分

早速ですが、定理の紹介です。

 

定理(積の差分)

数列 a b について

 \Delta(ab)=(\Delta a)\sigma b +a\Delta b

 \Delta(ab)=(\Delta a)b+(\sigma a)\Delta b

が成り立つ。

 

(証明)

定義に従って計算します。

 \Delta(ab)_{n}\\=a_{n+1}b_{n+1}-a_{n}b_{n}\\=(a_{n+1}-a_{n})b_{n+1}+a_{n}(b_{n+1}-b_{n})\\=(\Delta a)_{n}(\sigma b)_{n}+a_{n}(\Delta b)_{n}  

もう一方の数式は数列  a b を入れ替えることで証明ができます。

 

さて、この定理の主張や証明方法はまさに微分積分における積の微分と同様の形をとっています。*5

一般的に、この定理のような形の等式をライプニッツルールと呼ぶことがあり、この等式を満たすものが「微分」と定義されることさえあります。

そのため、この定理があるからこそ和分差分が微分積分と同じようなことが出来る、と言っても過言ではありません。

 

部分和分

積の差分と和分差分学の基本定理をミックスさせることで和分の公式が得られます。

まず、数列  a b についてさきほど得た積の差分の公式を書きます。

 \Delta(ab)=(\Delta a)\sigma b +a(\Delta b)

次に両辺の和分を考えます。

 \Sigma\Delta(ab)=\Sigma((\Delta a)\sigma b) +\Sigma(a\Delta b)

和分差分学の基本定理より

 \sigma(ab)-a_{0}b_{0}=\Sigma((\Delta a)\sigma b) +\Sigma(a\Delta b)

となるので、以下の定理を得ます。

 

定理(部分和分)

数列 a b について

 \Sigma(a\Delta b)=\sigma(ab)-a_{0}b_{0}-\Sigma((\Delta a)\sigma b)

が成り立つ。

 

 さて、ここからは具体例に適用していくつかの数列の和分を考えましょう。

 

例(等差数列と等比数列の積)

 c_{n}=n\cdot 2^{n}

により数列  c を定義します。

前回は、差分の結果(同形出現)を用いて数列  c の和分を考えました。

ここで

 a_{n}=n b_{n}=2^{n}

により数列 a b を定義すると、

 c=a\Delta b 

が成り立ちます。

よって部分和分により、

 (\Sigma c)_{n}\\=\sigma(ab)_{n}-a_{0}b_{0}-\Sigma( (\Delta a)\sigma b)_{n}\\=(n+1)\cdot 2^{n+1}-0-\Sigma 2^{n+1}\\=(n+1)\cdot 2^{n+1}-(2^{n+2}-2)\\=(n-1)\cdot 2^{n+1}+2

となります。

 

例(対数列)

対数関数  \log{x} は分数関数  \dfrac{1}{x} (x \gt 0)積分として特徴づけられます。

一方で数列  \{ \dfrac{1}{n} \} の和分は初等的に計算できません。

そこで、対数列  Log を以下で定義します。

 

 Log(n)= \left\{ \begin{array}{ll}0  \,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,(n=0) \\\Sigma\dfrac{1}{n}  \,\,\,\,\,\,(n\geq 1)\end{array} \right.

 

和分差分学の基本定理から

 \Delta Log(n)=\dfrac{1}{n+1}

となりますので、

 \dfrac{d}{dx} \log{x} =\dfrac{1}{x}

の類似と言えます。

 

さて、さらに関数  \log{x} との共通点を探るために数列  Log(n) の和分を計算しようと思います。

まず、関数  \log{x}積分は部分積分により以下のように計算されます。

 \displaystyle \int \log{x} dx \\=\displaystyle \int (x)' \log{x} dx\\=x\log{x}-\displaystyle \int x(\log{x})' dx\\=x\log{x}-\displaystyle \int x\cdot \dfrac{1}{x} dx\\=x\log{x}-\displaystyle \int dx\\=x\log{x}-x+C

( C積分定数)

 

次に数列  Log の和分を部分和分により計算しようと思います。

 \Sigma Log(n)

 = \Sigma Log(n) \Delta n

 =\sigma (nLog(n) )-0Log(0)-\Sigma \Delta (Log(n) )\sigma n

= (n+1)Log(n+1)-\Sigma \dfrac{1}{n+1}(n+1)

= (n+1)Log(n+1)-\Sigma 1

= (n+1)Log(n+1)-(n+1)

 

関数  \log{x} 積分と途中過程を比べるとそっくりです。

さらに出てきた結果もよく似た形になりました。

 

まとめ

今回は積の差分、そして部分和分を通して、微分積分との共通点を掘り下げました。

次回はTaylor展開の数列版を導入し、さらに微分積分との類似性を見ていくとともに、その反面、数列だからできることに触れます。

さらに二項定理を一般の数列に向けて一般化していく、ということも考えたいと思います。

 

以上になります。

最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

*1:例のごとく、複素数などとしても問題ありません。

*2:このことは数列全体が実ベクトル空間の構造を持つという言い方もできます。

*3:このことと簡単な確認により、数列全体が  \mathbb{R}-代数の構造を持つという言い方もできます。

*4:数列の間の線型写像を与えるという言い方もできます

*5:積の微分の証明は微分の定義式に戻って同様の式変形を行います。