今回は前回証明した数列におけるTaylor展開を具体的な数列に適用していきます。
証明については前回の記事をご参照ください。
前回証明した定理の紹介です。
定理(数列のTaylor展開)*1
任意の数列 について以下の等式が成り立つ。
が成り立つ。
等比数列と二項定理
まずは等比数列に数列のTaylor展開を適用しましょう。
( は定数)
として、数列 を定義します。
( のときはすべての項が の数列とします。)
このとき となるので、帰納的に以下のことが分かります。
また冪 は二項係数 *2 を用いて
となります。
さて、数列のTaylor展開を に適用します。
以上により以下の等式が得られます。
これはまさに二項定理と呼ばれるものに他ありません。
また途中式から得られる
に を代入すると
を得ますが、これは指数関数 の におけるTaylor展開
の類似とも言えます。
対数列
さて次は対数列 のTaylor展開を考えます。
計算により帰納的に
となることから、
のとき、
となります。
( のときは より上式は不成立です。)
よってTaylor展開を適用することで、 のとき
を得ます。*3
これは対数関数 の におけるTaylor展開
( )
の数列版になっています。
また二項定理の形に寄せるため
を用いると
と書けます。
あえて を従来の和の形で書いた場合、
と書けることになります。
この形だと高校数学の問題としても出題されそうですね。
分数列
次に対数列の類似として、分数列を考えます。
とおきます。*4
これまで通り定理を適用してもよい*5のですが、先ほどの対数列のTaylor展開を用いることでも計算できます。
やや複雑な計算になってしまいましたが、項別に差分をとるイメージで以下の等式が導かれました。*6
例のごとく二項係数で書き直すと
となります。
等差数列と等比数列の積
最後に高校数学ではおなじみの のTaylor展開を考えましょう。
の差分は以下のようになります。
さらに差分をとると
となりますが、
であることから
となります。繰り返し差分をとることで
となるため、等差数列の要領で
となります。
特に
より
となることから、この数列のTaylor展開は
または
と書けます。*7
まとめ
今回は数列のTaylor展開の具体例の計算を行いました。
どの結果も関数のTaylor展開の類似になっており、しかも収束条件といった議論が不要でした。
加えて、二項定理のような記述がどのような数列でも与えられたことになります。
このように数列のTaylor展開は2つの側面を持っているという点で興味深いものがあります。次回は個別に、「とある数列」に注目していこうと思います。
今回は以上になります。最後までお読みいただき誠にありがとうございました。