今回はタイトルのように数列におけるTaylor展開から見ていくことになります。
(今回は定理の証明、次回は具体例の計算になります。)
(前回の内容はそれほど使いませんが、合わせてお読みいただければ幸いです。)
さて、一般に微分積分におけるTaylor展開は以下のようになります。
しかし、この等式が成り立つには剰余項の収束を見ないといけませんし、そもそも任意の実数 で成り立つとは一般には言えません。
さて、今回は一般の数列で同様の展開を考えるわけですが、こちらの場合は剰余項の話を考えなくても大丈夫ですし、任意の項で成り立つ形で証明ができます。
その意味では今までと異なり「大学で学ぶ関数のTaylor展開の入門編」とも思えます。
ではさっそく数列のTaylor展開に触れていきましょう。
数列の高次差分
まず準備として微分における高次導関数の類似を差分にも定義します。
補題(数列の高次差分)
一見、当たり前のように成り立ちそうな補題ですが、ここでは数学的帰納法を用いてしっかりと証明しておきます。(定理の証明に使いますが、本題から逸れはするので読み飛ばしてもらっても大丈夫です。)
(証明)
を示せば、
から自動的に
が成り立つので、以下では
を示します。
として 以上の整数 についての数学的帰納法を構成します。
(1) のとき
このときは なので
より補題は成立します。
(2) で成立と仮定したとき
となる , について以下のパターンが考えられます。
(あ) のとき
より補題は成立します。
(い) のとき
とすると が 以上の整数であることから のときの仮定が使えます。
すなわち
となります。
さらに両辺の差分を考えることにより*1
高次差分の定義により
よって補題は成立します。
(あ)(い)により のときも常に補題が成立することが言えました。
以上により任意の , について補題が成立します。
(証明終わり)
数列のTaylor展開
いきなりですが定理の紹介です。
定理(数列のTaylor展開)*2
任意の数列 について以下の等式が成り立つ。
が成り立つ。
(証明)
任意の数列 の番号 についての帰納法で示します。
(1) 任意の数列の第 項 について
となるので のとき定理は成立します。
(2) 任意の数列について*4 のときに定理が成立すると仮定します。
すると任意の数列 に対して
数列 と数列 について仮定を適用すると
…①
…②
が成り立つと言えます。*5
先ほどの補題(高次差分)により
が成り立つので②は
…③
と書きかえられます。
次に和分差分学の基本定理で例として紹介した
を用いて③の右辺を変形していきます。
…④
①と④を用いると
ゆえに任意の数列 について のときも定理が成立することが示されました。
(1)(2)により定理が証明されました。
(証明終わり)
証明が長くなってしまったため今回はここまでとします。
補題、定理ともに「高校数学ではあまり用いない形の仮定で行う数学的帰納法」を使ったことがミソです。*6
次回はこの定理を様々な数列に適用していき二項定理の数列版を考えます。
それでは最後までお読みいただき誠にありがとうございます。
また次回もどうぞよろしくお願いします。
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