とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【組合せ論】(単発)サッカーボールはどんな形か? Local から Global へ。「オイラーの多面体定理の活用」

 「サッカーボールってどんな形だったっけ?」
今回は"断片的な情報"からサッカーボールの面の数や構成を計算してみようと思います。

そのうえで、高校数学に登場する以下の定理を活用します。

 

定理(オイラーの多面体定理)

凸多面体 K の頂点の数、辺の数、面の数をそれぞれ VEF とする。このとき以下の等式が成り立つ。

 V-E+F=2

 

 

(今回の裏テーマは、高校数学であまり主役にならないオイラーの多面体定理をどう活用するか、です。)

 

 

【予備知識】

ほとんど必要ありません。

 

 

問題設定

極力、少ない "local" な記憶(情報)からでもサッカーボールの "global" な形を確定させたいため、以下のような図を考えます。

f:id:kfukui-math7:20210221214748j:plain

「各頂点に集まる面の組み合わせは、どの頂点をとっても同じであるはずなのですが…それ以外は正五角形の面が隣り合うことはないことくらいしか思い出せない。上の図のように正六角形の面が各頂点に3枚集まるかも定かではない…」

ぐらいの状態でサッカーボールの形を決定させましょう。

 

問題

凸多面体 K は以下の条件を満たす。

(1) 各辺の長さは等しく、各面は正五角形または正六角形となる。

(2) 正五角形の面は、他の正五角形の面と頂点を共有しない。*1

(3) 各頂点に集まる正五角形の面、正六角形の面の個数は一定である。

 

このとき K はどのような多面体だろうか?

 

解答

K の頂点の数を v 、辺の数を e 、面の数を f とおきます。*2

さらに正五角形の面の数を m 、正六角形の面の数を n とします。

 

まず(3)について、各頂点に集まる正五角形の面の数は(2)の条件より 1 となります。

一方、各頂点に集まる正六角形の面の数を k とすると、多面体をなすためには k\ge 2 となる必要があります。

ただ、k\ge 3 とすると、各頂点に集まる"角度"は  \dfrac{3}{5}\pi+k\cdot\dfrac{2}{3}\pi  \ge 2\pi より 2\pi を超えてしまい不適切です。

 

そのため k=2 となります。

 

さて、各辺に集まる面の数が 2 であることや各頂点に集まる面の数が 3 となることから、vef を以下のように数えることが出来ます。(重複に気を付けています。)

 f=m+n

 e=\dfrac{5m+6n}{2}

 v=\dfrac{5m+6n}{3}

さらに正五角形の面を各頂点に集まる正五角形の数に注目し、これも重複に気を付けて数えると以下の等式を得ます。

m=\dfrac{v}{5}

これで未知である5つの自然数 vefmn  に対して4つの等式が得られました。

最後に"決め手"としてオイラーの多面体定理を用いましょう。

 v-e+f=2

 

やや面倒ですが、これら5つの等式からなる連立方程式を"解く"ことで

v=60

e=90

f=32

m=12

n=20

を得ます。

 

まとめ

 

これで K の構造が判明します。

たとえば、面の数は 32 であること、そしてそのうち正五角形の面の数は 12 であることが分かります。

また、言い換えれば、条件(1)(2)(3)を満たす凸多面体は今回の K 以外の構造は考えられない、ということになります。

 

このように各頂点にフィーチャーした local な情報から全体の構造という global な情報が決まる、といういかにも「数学っぽい」話につなげることもできます。

 

今回は高校数学であまり日の目を見ない存在「オイラーの多面体定理」を活用してみました。

また機会があれば他の活用に関しても紹介したいと思います。

 

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

 

*1:頂点レベルで隣り合わない、というイメージ。

*2:それぞれvertex、edge、face の略です。