とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【関数】(単発)4次関数のグラフが線対称になるには?「微分とグラフの対称性(線対称・点対称)」

今回は昔(高校生の頃)に調べていた4次関数のグラフの対称性について記事にまとめました。

具体的に言うと「4次関数のグラフが線対称となる条件を微分を使って求めよう」というテーマです。

なお、今回は対称性という言葉は「y軸に平行な直線に関する線対称」もしくは「点対称」の意味で使うことします。

また簡単のため、原則として登場する関数の定義域は実数全体で考えます。

 

数学Ⅲの微分を知っていれば十分に理解できるゆるふわ(?)な高校数学の記事になっていますので気軽にどうぞ。

 

 

 

3次関数まで

4次関数のグラフの話の前に3次以下の場合を簡単に見ていきましょう。

まず、1次関数ですが、グラフは直線となるので、グラフ上の各点において点対称になっています。

次に、2次関数のグラフは下の図のように放物線になりますが、これは「放物線の軸」に関して線対称なグラフになっています。

f:id:kfukui-math7:20201230092908p:plain

 

さて、3次関数というと「言われてみれば」というレベルになってくるかもしれませんが、下の図のように常に点対称なグラフを描きます。

f:id:kfukui-math7:20201230100243p:plain

後でついでに証明しますが、3次関数の点対称の中心は凹凸の変わり目である「変曲点」と一致していますね。

一般の4次関数について

1次関数…点対称*1

2次関数…線対称

3次関数…点対称

と来ていますので、「もしかしたら4次関数は線対称?」と思うかもしれませんが、残念ながらこれ以上次数を上げていっても一般には対称性があるとは言えません。

f:id:kfukui-math7:20201230100904p:plainf:id:kfukui-math7:20201230101114p:plain

上の図のように4次関数は線対称になる場合もあれば、そうでない場合もあります。

そこで「線対称になる条件を関数の係数に対して定めることができるのでは?」という疑問が湧いてきます。

 

微分と対称性

まずは対称性を関数の等式で表現します。

補題1(線対称・点対称)

実数全体で定義された関数 f(x) と実数 pq を与える。

(1) y=f(x) のグラフが直線 x=p に関して線対称になる条件は任意の実数 x について以下の等式が成り立つことである。

 f(x)=f(-x+2p) .

 

(2) y=f(x) のグラフが点 (p,q) に関して点対称になる条件は任意の実数 x について以下の等式が成り立つことである。

 f(x)=-f(-x+2p)+2q .

証明は点 (x,y) x=p に関して線対称な点、点 (p,0) に関して点対称な点をそれぞれ考えるだけなので省略します。

 

さて、このことを用いて以下の定理を証明します。

定理2(微分と対称性)

実数全体で定義された微分可能な関数 f(x) と実数 p を与える。

(1) y=f(x) のグラフが直線 x=p に関して線対称になるための必要十分条件は、導関数 y=f'(x) のグラフが点 (p,0) に関して点対称になることである。

 

(2) y=f(x) のグラフが点 (p,q) に関して点対称になるための必要十分条件は、 f(p)=q を満たし、導関数 y=f'(x) のグラフが直線 x=p に関して点対称になることである。

(証明)

(1)

(⇒)

y=f(x) のグラフが直線 x=p に関して線対称になるとき、補題1より

f(x)=f(-x+2p)

が成り立ちます。

合成関数の微分を用いて両辺を微分します。

f'(x)=f'(-x+2p)\cdot (-1)

すなわち

f'(x)=-f'(-x+2p)

となるため、再び補題1より、y=f'(x) のグラフは点 (p,0) に関して点対称となります。

 

(⇐)

逆に、y=f'(x) のグラフが点 (p,0) に関して点対称であれば、補題1より、

f'(x)=-f'(-x+2p)

と書けますが、両辺を不定積分すると

 f(x)=f(-x+2p)+C ( C *2は定数)

と書けます。

(厳密には右辺の積分t=-x+2p とおいて置換積分を実行することで得られます。)

上式に  x=p を代入すると

 f(p)=f(p)+C

となるので、ここから

 C=0 

となり、y=f(x) のグラフは直線 x=p に関して線対称になります。

 

(2)は、ほとんど(1)と同様です。

(⇒)

y=f(x) のグラフが点 (p,q) に関して点対称になるとき、補題1より

 f(x)=-f(-x+2p)+2q

となります。

まず、両辺に x=p を代入すると

f(p)=-f(p)+2q

から即座に

f(p)=q

を得られます。

また、(1)と同様に合成関数の微分により、

f'(x)=f'(-x+2p)

が得られます。

 

(⇐)

 f(p)=q を満たし、導関数 y=f'(x) のグラフが直線 x=p に関して点対称になるとき、補題1より

f'(x)=f'(-x+2p)

となり、両辺を不定積分することで

 f(x)=-f(-x+2p)+C ( C は定数)

と書けます。

両辺に  x=p を代入すると f(p)=q より

 q=-q+C

となるため

 C=2q

が得られます。

したがって

 f(x)=-f(-x+2p)+2q

となるため、補題1により結論を得ます。

(証明終わり)

 

3次関数の対称性

定理2を用いて、3次関数のグラフが変曲点に関して対称であることを示しましょう。

 

補題3(3次関数の対称性)

 f(x) を3次関数とする。

y=f(x) のグラフは変曲点に関して点対称である。*3

(証明)

f(x) の第2次導関数 f''(x) は1次関数なので、 f''(p)=0 となる p はただ一つ存在し、その前後で f''(x) の符号が変化します。

特に y=f''(x) のグラフは点  (p,0) について点対称なので定理2(1)により、 y=f'(x) のグラフは直線 x=p に関して線対称となります。

さらに q=f(p) とすると、定理2(2)により、y=f(x) のグラフは点  (p,q)

に関して点対称となります。

 (p,q) y=f(x) のグラフの変曲点ですので、証明が完了します。

(証明終わり)

 

微分と対称性を使うと面倒な計算をせずとも簡単に証明ができますね。

ちなみに  f(x)=ax^{3}+bx^{2}+cx+d とおくと、p=-\dfrac{b}{3a} となります。

 

さて、次は本題の4次関数に入っていくわけですが1次関数と違い、3次関数は点対称の中心が x 軸上の点とは限らないため、これから次数を上げて対称性を付加していくためには条件が必要になってくるということもこれで見えてきました。

このことも踏まえて4次関数の話に入っていきましょう。

 

4次関数の対称性

いきなり定理です。

 

定理4(4次関数の対称性)

4次関数 f(x)=ax^{4}+bx^{3}+cx^{2}+dx+e ( a \neq 0 ) のグラフが線対称となる条件は等式  b^{3}-4abc+8a^{2}d=0 が成り立つことである。

また、このとき  y=f(x) のグラフは直線  x=-\dfrac{b}{4a} に関して線対称である。

(証明)

定理2(1)より f(x) が直線  x=p に関して線対称となるための必要十分条件は、3次関数 y=f'(x) のグラフが  (p,0) に関して点対称となることでした。

 f'(x)=4ax^{3}+3bx^{2}+2cx+d ですので、補題3より y=f'(x) のグラフが  (p,0) に関して点対称となるための条件は、

p=-\dfrac{3b}{3\cdot 4a}

すなわち

p=-\dfrac{b}{4a}

が成り立つことと

f'(p)=0 が成り立つことです。

まとめると

f'(-\dfrac{b}{4a})=0

となることなので求める条件として

 \displaystyle 4a(-\dfrac{b}{4a})^{3}+3b(-\dfrac{b}{4a})^{2}+2c(-\dfrac{b}{4a})+d=0

を得ます。

この等式を整理すると

b^{3}-4abc+8a^{2}d=0

となります。

(証明終わり)

 

書ききれなかった色々、と「まとめ」

線対称な4次関数のその高次導関数たちのグラフをまとめて図示してみました。

綺麗に対称の軸や中心がそろっていることが見えますね。 

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5次関数はどうなるのか?6次関数は?

とさらに高次に話を展開することは可能です。 

定理2を用いると

5次関数…4次関数の線対称条件から条件1つ。

6次関数…導関数(5次関数)の対称の中心が x 軸上にないといけないので条件が2つに。

7次関数…条件2つ。

8次関数…条件が増えて3つに。

(以下略)

となりそうですね。

 

線対称な4次関数は f(x)=a(x-p)^{4}+b(x-p)^{2}+c と書けます。

(任意の4次関数を (x-p)^{k} の和で書けることを恒等式の考え方から示したうえで補題1を適用すると証明ができます。)

したがってたとえば以下の4次方程式を対称性を利用して解くことが出来ます。

(4次方程式の解の公式のことを知っていたら話は別ですね。どちらかというと解くというよりも定理4を使うことで「2次関数チックに解けるかどうかを判別する」に近いかもしれません。)

 x^{4}-4x^{3}+2x^{2}+4x-2024=0

(1)定理4の等式で対称性を確認。

(2)自信をもって  (x-1)^{4}-4(x-1)^{2}-2021=0 と変形。

(3)頑張って解く(以下略)

 という感じですかね。

 

 

さて、今回はがっつり高校数学を使って4次関数の対称性を題材に微分と対称性の話を深めました。微分を使うことで計算を節約して証明が出来た部分もありましたね。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。 

次回もぜひよろしくお願いします。

*1:グラフ(直線)に対して垂直な軸をとれば線対称でもあります。

*2:いわゆる積分定数というやつです。

*3:厳密には変曲点のみで点対称まで言えますし、次の定理で使うべきですが、記事が長くなるのでゆるくやっています。