とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【問題】逆関数の積分の2通りの解法「三角関数tanの逆関数の積分を求めよ」

今回は大学入試でもしばしば現れる「逆関数積分」の問題に2通りの解法を与えます。珍しく受験勉強向けの内容かもしれませんが、軽い内容ですので是非ご覧ください。

 

 

問題

 

問題

 x についての関数 \displaystyle \tan x \,\, \left( -\frac{\pi}{2} \lt x \lt \frac{\pi}{2}  \right)逆関数  f(x) について

不定積分 \displaystyle \int f(x) dx を計算せよ。

ただし f(x) を用いて表してもよい。

逆関数微分可能性など厳密な議論は今回取り上げません。 

 

方針

2つの方針を考えますが、実は本質的な違いはあまりありません。

与えられた不定積分を書きかえる手法として強力な手段である「置換積分」「部分積分」を活用していきます。

方針1 逆関数を用いてまず置換積分

f(x) のままだと抽象的な関数積分するにも手が出ません。

そこで具体的な関数  \tan を用いて与えられた不定積分が書きかえられていくことを狙います。

そのためには逆関数の定義ともいえる変形

 y=f(x) \iff x=\tan y 

を用いることで積分変数を x から y に変換します。

 

方針2 逆関数導関数を用いてまず部分積分

f(x) だけでは抽象的な関数のままですが導関数 f'(x) は簡単な公式で具体的に計算できます。

ここでも用いるのは以下の式です。

 y=f(x) \iff x=\tan y 

そこで f(x) ではなく f'(x) を用いるために部分積分を実行します。

 

解答

解答1 逆関数を用いてまず置換積分

y=f(x) とおきます。

 x=\tan y となることから置換積分により与えられた式は次のように変形されます。

\displaystyle \int f(x) dx = \int y \frac{dx}{dy} dy

次に部分積分により

  \displaystyle\int y \frac{dx}{dy} dy

\displaystyle = yx-\int xdy

\displaystyle = xf(x)-\int \tan y dy

\displaystyle = xf(x)+ \log |\cos y| +C ( C は定数)

を得ます。

  \displaystyle \log |\cos y|

\displaystyle =\frac{1}{2}\log ( \cos^{2} y)

\displaystyle =\frac{1}{2}\log\frac{1}{\tan^{2}y+1}

\displaystyle =\frac{1}{2}\log\frac{1}{x^{2}+1}

\displaystyle =-\frac{1}{2}\log(x^{2}+1)

を用いると

\displaystyle \int f(x) dx = xf(x)-\frac{1}{2}\log(x^{2}+1) +C ( C は定数)

を得ます。

 

(答え) \displaystyle \int f(x) dx = xf(x)-\frac{1}{2}\log(x^{2}+1) +C ( C は定数)

解答2 逆関数導関数を用いてまず部分積分

y=f(x) とおきます。

 x=\tan y となることから \dfrac{dx}{dy}=\dfrac{1}{\cos^{2} y} を得ます。

 \dfrac{1}{\cos^{2} y} =\tan ^{2} y +1=x^{2}+1 

となることに合わせて公式

 \dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy} }

が成り立つことを利用すると

 \dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{x^{2}+1}

となりますが、これは

f'(x)=\dfrac{1}{x^{2}+1} とも書けます。

\displaystyle \int f(x) dx = \int (x)' f(x) dx

として部分積分を用いると

 \displaystyle \int f(x) dx

\displaystyle=xf(x)-\int xf'(x) dx

\displaystyle=xf(x)-\int \frac{x}{x^{2}+1} dx

\displaystyle=xf(x)-\frac{1}{2}\int \frac{2x}{x^{2}+1} dx

\displaystyle=xf(x)-\frac{1}{2}\int \frac{(x^{2}+1)'}{x^{2}+1} dx

\displaystyle=xf(x)-\frac{1}{2}\log( x^{2}+1) +C ( C は定数)

となります。

 

 (答え) \displaystyle \int f(x) dx = xf(x)-\frac{1}{2}\log(x^{2}+1) +C ( C は定数)

 

まとめと類題

初手の違いはあれど、どちらも変数の変換や部分積分といった手法を複数組み合わせて f(x) を求めずとも積分を実行することができました。 *1

もちろんこの方法は一般化できます。つまり以下のような問題でも同様の手法で計算できます。

 

類題

以下のそれぞれの場合において  x についての関数 f(x)逆関数  f^{-1}(x)不定積分 \displaystyle \int f^{-1}(x) dx を計算せよ。

ただし f(x) を用いて表してもよい。

(1) 指数関数 f(x)=e^{x} の場合

(2) 三角関数 \displaystyle f(x)=\sin x\,\, \left( -\frac{\pi}{2} \le x \le \frac{\pi}{2}  \right) の場合

(3) 三角関数 \displaystyle f(x)=\cos x\,\, \left( 0 \le x \le \pi \right) の場合

 

 

 (1)は  \log x不定積分に他ならないのですが、解法2を用いると高校数学の問題集などで 1=(x)' として部分積分を考える理由付けにもなっていますね。

 

今回は大学入試でも有名な問題に簡単な解説をつけてみました。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

*1:もちろん f'(x)f(0) などから \displaystyle f(x)=\int^{x}_{0} \frac{1}{t^{2}+1}dt と書くこともできます。