【問題】剰余で作った漸化式と極限「空き瓶交換でどれだけ飲めるか問題の一般化」
「酒屋さんに空き瓶を3本持って行ったら新しいもの1本と交換してもらえます。最初に100本買った場合、この空き瓶交換を繰り返せば合計何本飲めるでしょうか?」
この算数で題材となる話を一般化し、「漸化式」や「極限」からアプローチしていこうと思います。
問題
問題
を 以上の整数、 を正の整数とする。
商店Sでは瓶入りジュースAを販売している。この商店ではジュースAの空き瓶を 本持って行くと新品のジュースA 本と交換してもらえる。
最初に新品のジュースAを 本買った場合、交換して手に入れたものも含めジュースAを合計何本飲めるか。
ただし、
・何度も交換することは可能とする。
・空き瓶はジュースAを飲む以外の手段では手に入れられないとする。
方針
飲み干す→空き瓶を交換する→飲み干す→…の繰り返しを考えます。
交換で手に入る新品のジュースの本数はおおよそ ぐらいになりますので、いつかは尽きることが予想できます。
そこでこのことを漸化式を用いてきっちり立式していきます。
回目の交換で新品のジュースを 本手に入れたとすれば、数列 について無限級数を考えれば収束(これも示します)し、その和が求めるべき答えとなります。
ただし は一般には成り立ちません。
そこで で割った余りまで目を向ける必要が出てきます。
解答1(漸化式の利用)
, とし、以下次の要領で数列 , ( )を定めます。
…①
…②
(実数 に対して は を超えない最大の整数を表すこととします。)
すると「毎回空き瓶を可能な限り交換してもらう」という動きにした場合、
は 回目の交換で入手できる新品のジュースの空き瓶の本数
は 回目の交換で使われなかった空き瓶の本数
に対応していることが分かります。*1
このことから、と言ってもいいですし①,②からと言っても良いですがすぐに次のことが分かります。
は 以上の整数。
は 以上 以下の整数。
は①,②から「 を で割った余り」とも表現できます。
さて、いくつかのステップに分けて答えを導き出したいと思います。
Step1 収束の確認
準備として ( ) を用意します。
すると等式②から
すなわち
を得ます。
と から
(等号は のときに限り成り立つ)
となります。
そこで任意の正の整数 について と仮定すると
を得て は単調に減少する整数の数列となりますが
となってしまい
, であることに矛盾します。
したがってある正の整数 について となります。
さらにこのような を1つ選ぶと①と から
となるので
が成立します。
さらに②から
と書けます。
また、
から
も得られます。
以上により
は収束すること、特に となること、
が分かります。
なお、ここで出てきた ですが、
と仮定すると
ある正の整数 について となるため、②により すなわち を得ますが、これを繰り返すと となってしまいます。
したがって となります。
Step2 極限値を漸化式から計算
とおきます。
Step1の途中で出てきた等式 について、Step1の結果より
を得ます。
左辺を計算することで
となりますが
から
が成り立ち、これを整理することで
となります。
Step3 rの決定
これで求めたい「合計何本飲めるか」を表す を計算できたように思えますが、 が計算できていません。そこで次のように考えます。
定義から は正の整数です。
しかし一般に正の整数 について は の値によっては正の整数にはなってくれません。
そこで Step1 で調べたように であることを使います。
は連続する 個の整数なので、この中で の倍数は 個に限られます。
つまり は の中で の倍数であるもの(言い換えれば が整数となるもの )と一致することになります。
したがって と書くことが出来ます。
(答え)
(例)
, のとき
より3本の空き瓶を新品1本に交換してもらえる場合は1000本最初に買うと合計1499本飲めることになります。
解答2(算数的な解法)
ここまで、数列や漸化式、極限といった高校数学の道具をガンガン使いましたが「算数的な有名な解法」も一応ありますので紹介します。解答1でひねり出した答えの形がヒントになっています。(おそらく"ググってみる"とこちらの方がヒットすると思います。)
まず、最初に買った 本を飲んでできる空き瓶を次のように分けます。
①1本だけ除外します。
②残り 本を 本ずつまとめていきます。
③余った 本は放置します。
流れとしては①を起爆剤にして
②の空き瓶に合流させます。すると 本のまとまりができるので、これを新品に交換すると新たに空き瓶1本に生まれ変わります。
これを①と同様に起爆剤にして次の 本のまとめた空き瓶に合流させます。
以降、これを繰り返すと②でまとめたときの"組"数だけ新品交換ができることが分かります。
つまり を で割った余り 本だけ新品交換できたことになります。
つまり となります。
まとめ
解法1では漸化式や極限という大道具を用いて「空き瓶問題」を解いてみました。
解法2まで見てしまうと、印象が変わってしまいますが、結果的に「○○で割った商や余りで作られた漸化式」の無限級数を計算できたという成果があったので、これはこれで良いのでは?と思っています。
今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは次回もどうぞよろしくお願いします。
*1:この部分が分かりにくい場合は なので試してみましょう。