とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

MENU

【問題】2次曲線の回転・平行移動「原点でx軸と接する放物線における頂点と原点の位置関係は?」

放物線をぐるんぐるん回してぐいぐいっとずらして原点に接するようにしたとき原点と頂点の位置関係はどうなるのかを直線と x 軸のなす角という観点で観察する問題です。

 

f:id:kfukui-math7:20210504160143p:plain

 

 

 

 

問題

 

問題

 xy 平面において放物線  y=ax^2 に合同*1な放物線  C が原点  \rm{O}x 軸と接している。(  a は  x y に無関係な正の実数とする。)

このような C でその頂点  \rm{P} が原点  \rm{O} と異なるもののうち、直線  \rm{OP}x 軸のなす角  \theta (  0\le\theta \le \dfrac {\pi}{2} ) が最大となるものについて  \theta=\theta_{0} とおく。

\sin \theta_{0} の値を求めよ。

 

 

方針

「冒頭の図のような放物線の方程式を求めればよい!」というのはあまりに無鉄砲です。(もちろん回転移動や平行移動を駆使したり、2次曲線の一般形に関する知識を持ち合わせていたりすればどうにかなりはします。)

そこで問題の主従関係を入れ替えて「いつも通りの2次関数」を扱うことを狙っていきます。

つまり放物線 C x 軸ごと回転移動・平行移動をすることで  y=ax^{2} に戻し、頂点を原点と見立てたうえで、x 軸を放物線  y=ax^{2} 上の点における接線と見立てていきます。

f:id:kfukui-math7:20210504181555p:plain

 

 

解答

 C に適宜回転・平行移動を施し放物線 y=ax^{2} に一致させます。

このとき各点と直線が以下のように移るとしても良いです。

 

 \rm{P} → 原点

 \rm{O} → 点 (t,at^{2}) (  t は正の実数)

x 軸 → 直線 y=2atx-at^{2} *2

 

すると直線  \rm{PO} の傾きは  at ですので、この直線と"新しい"  x 軸の正の向きのなす角  \alpha \tan \alpha =at を満たします。

同様に"もとの"  x 軸である直線 y=2atx-at^{2} の傾き  2at から、この直線と "新しい"  x 軸の正の向きのなす角  \beta \tan \beta =2at を満たします。

ここで  a および  t は正の実数であることから  0\lt \alpha \lt \beta \lt \dfrac{\pi}{2} としても問題ありません。

 

すると  \theta = \beta -\alpha ( 0\lt \theta \lt \dfrac{\pi}{2} を満たします。)となり、

  \tan \theta

 =\tan (\beta -\alpha )

 =\dfrac{ \tan\beta -\tan\alpha}{1+\tan \beta \tan \alpha}

= \dfrac{at}{1+2a^{2}t^{2}}

を得ます。

0\lt \theta \lt \dfrac{\pi}{2} の範囲で \tan \theta は単調に増加する連続関数ですので、 \tan\theta が最大値をとるときと \theta が最大となるときが一致します。

そこで  at=u とおいて正の実数 u について

関数 f(u)=\dfrac{u}{1+2u^{2}} の最大値を考えます。

 

微分して増減を調べたり、もしくは分子と分母を u で割って相加平均と相乗平均の関係を使ったりすることですぐに f(u)u=\dfrac{1}{\sqrt{2} } のときに最大値  \dfrac{1}{ 2 \sqrt{2} } をとることが分かります。

 

すなわち  \tan \theta_{0} =\dfrac{1}{ 2 \sqrt{2} } となります。

ここから  \sin \theta_{0} = \dfrac{1}{3} を得ます。

 

(答え)  \sin \theta_{0} = \dfrac{1}{3} 

 

今回は「逆転の発想」の回転・平行移動バージョンみたいな解法の問題でした。

後半は \tan を用いましたが、部分的な別解法はいろいろあります。

たとえばベクトルの内積を用いるのも一例です。ぜひいろいろなやり方で試してみてください。

また、答えが a によらない定数になりました。

これは任意の放物線が相似であること(拡大縮小の考え方を用いれば簡単に証明できます。)を考えれば明らかな結果ですが、案外盲点かもしれませんね。

 

では今回は以上です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もぜひともよろしくお願いいたします。 

 

 

*1:回転移動・平行移動・対称移動を組み合わせて一致させることができる

*2:微分を用いています。