とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

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【問題】3変数対称式の値「2022乗和の値を求めよ」

 

 

3変数の対称式の値は標準的な問題では3乗和止まりですが、今回は2022乗和の値の性質を調べる問題を紹介したいと思います。

 

 

問題

 

問題

 k2 以上の整数とする。

複素数 \alpha \beta \gamma

 \alpha + \beta + \gamma = k-1

 \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha  = 1

 \alpha \beta \gamma =2k-1

を満たすとき、以下の問いに答えよ。

(1)  \alpha ^{2022}+ \beta ^{2022}+ \gamma ^{2022} は整数となることを示せ。

(2)  \alpha ^{2022}+ \beta ^{2022}+ \gamma ^{2022}k で割った余りを求めよ。

 

 

方針

 \alpha ^{2}+ \beta ^{2}+ \gamma ^{2} \alpha ^{3}+ \beta ^{3}+ \gamma ^{3} の値なら「基本対称式で表す」ことは容易ですが、2022乗和の値は次数が高すぎます…。

そこで「次数が高いなら落とせばいいじゃん」という嫌なことを解消すればどうにかなるという考えのもと

解と係数の関係を懸け橋に基本対称式から3次方程式を作り、その方程式を利用します。

x=1+2i のとき  x^{5}+2x^{4}+3x^{2}+6x+1 の値は?』みたいな問題でも使う手法です。

方程式の話に押し付けられるという意味では基本対称式と解と係数の関係の相性は抜群です。

 

解答

 \alpha + \beta + \gamma = k-1

 \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha  = 1

 \alpha \beta \gamma =2k-1

の3式より

複素数 \alpha \beta \gamma は以下の x に関する3次方程式の解です。

 x^{3}-(k-1)x^{2}+x-2k+1=0

そのためたとえば

 \alpha ^{3}-(k-1)\alpha ^{2}+\alpha -2k+1=0

を満たします。

両辺に  \alpha^{n} ( n0 以上の整数)をかけると

 \alpha ^{n+3}-(k-1)\alpha ^{n+2}+\alpha ^{n+1}-(2k-1)\alpha ^{n} =0 …①

を得ます。

\beta\gamma についても同様の計算で

 \beta ^{n+3}-(k-1)\beta ^{n+2}+\beta ^{n+1}-(2k-1)\beta ^{n} =0 …②

 \gamma ^{n+3}-(k-1)\gamma ^{n+2}+\gamma ^{n+1}-(2k-1)\gamma ^{n} =0 …③

を得ますので、特に①~③の辺々を足し合わせることで

  (\alpha ^{n+3}+\beta ^{n+3}+\gamma ^{n+3})

 -(k-1)(\alpha ^{n+2}+\beta ^{n+2}+\gamma ^{n+2})

 +(\alpha ^{n+1}+\beta ^{n+1}+\gamma ^{n+1})

 -(2k-1)(\alpha ^{n}+\beta ^{n}+\gamma ^{n}) =0

が成り立ちます。

ここで  a_{n}= \alpha ^{n}+\beta ^{n}+\gamma ^{n} ( n0 以上の整数) とおくと、先ほどの式は

 a_{n+3}=(k-1)a_{n+2}-a_{n+1}+(2k-1)a_{n}…(*)

という数列  \{a_{n} \} に関する漸化式を与えます。

 

初期値を考えます。

 \alpha\beta\gamma \neq 0 であることを考慮すれば

a_{0}=1+1+1=3

問題で与えられた条件から

a_{1}=k-1

です。

また等式

 \alpha ^{2}+\beta ^{2}+\gamma ^{2}=(\alpha +\beta + \gamma )^{2}-2( \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha )

より

a_{2}=(k-1)^{2}-2

となります。

 

(1)は数学的帰納法により証明が可能です。

[Ⅰ] n=0,1,2 については先ほどの確認により整数であることは明らかです。

[Ⅱ]  n=m, m+1, m+2 (  m0 以上の整数)で a_{n} が整数であると仮定すれば、漸化式(*)と合わせて a_{m+3} が整数であることが即座に言えます。

以上により  a_{n} は常に整数となるので特に  n=2022 のときである(1)の証明は終わったことになります。

 

次に(2)を考えるため、以下では法を k とする合同式を考えます。

すると  \{a_{n} \} に関する漸化式や初期値は以下のように書けます。

 

 a_{n+3}\equiv -a_{n+2}-a_{n+1}-a_{n}

a_{0}\equiv 3

a_{1}\equiv -1

a_{2}\equiv -1

 

これらから順次  a_{3} a_{4} a_{5} a_{6}、…を調べていくと

 a_{3} \equiv -1

 a_{4} \equiv 3

 a_{5} \equiv -1

 a_{6} \equiv -1

 a_{7} \equiv -1

 a_{8} \equiv 3

 a_{9} \equiv -1

となり、周期性の存在に気づきます。

つまり

 n4 の倍数のときに限り  a_{n} \equiv 3 であり、

それ以外の場合では  a_{n} \equiv -1

となることが断言できます。

特に  n=2022 のときは a_{2022} \equiv -1 となりますので、

 \alpha ^{2022}+ \beta ^{2022}+ \gamma ^{2022}k で割った余りは  k-1 となります。

 

(答え) k-1

 

 

今回は以上です。

こんな感じで今後は自作の高校数学の問題をちょろちょろと放出していきたいと思います。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。