とぽろじい ~大人の数学自由研究~

高校数学から分かる新しい数学、大学で学ぶ数学を少しずつまとめていくブログです。ゆくゆくは本にまとめたいと思っています。

MENU

【数列】異なるk項の積の総和の考察2「異なるk項の積の総和の漸化式の応用2」

今回は、前回考えた(有限)数列の「異なる2項の積の総和」に関する漸化式の応用その2を紹介します。

"その1"やそもそもの漸化式の作り方は以下の記事をご覧ください。

 

 

math-topology.hatenablog.com

 

 

前回の復習と今回の展望

詳細は前述の前回の記事をご覧ください。

 

研究(異なるk項の積の総和)

k1 以上の整数、nk 以上の整数とする。

n 個の整数 a_{1},a_{2},a_{3},\dots ,a_{n} から異なるk 個の数選んで作る積の総和 P_{n}(k) を求めたい。

 

 【予備知識】

高校数学の数列の知識があれば十分です。

 

定義(異なるk項の積の総和の拡張)

(1) k1 以上の整数、nk 以上の整数とする。n 個の整数 a_{1},a_{2},3,\dots ,a_{n} から異なるk 個の数選んで作る積の総和を P_{n}(k) とする。

 

(2) 任意の 0 以上の整数 n について P_{n}(0)=1 とする。

 

(3) 0 以上の整数  k ,  n について  n\lt k のとき、P_{n}(k)=0 とする。特に任意の正の整数 k について P_{0}(k)=0 となる。

 

 

補題(異なるk項の積の総和の漸化式)

数列  \{ a_{n} \} について、初項から第 n 項までの n 個の項  a_{1},a_{2}, \dots , a_{n} に対して  P_{n}(k) を与える。このとき次の等式が成り立つ。

P_{n+1}(k+1)=P_{n}(k+1)+P_{n}(k)a_{n+1}

さらにこの等式は任意の 0 以上の整数 n , k で成り立つ。

 

前回は補題をもとに P_{n}(k)k の値が小さい方から順に求めてみました。

今回はこの補題と誰でも簡単に使える「表計算ソフト*1」を使って、「2変数の漸化式」で各項が求まる様子を観察しようと思います。

 

関数の作り方

※実装してみたい!という人向けです。ただ、かなり初歩的な方法で作っているので誰でもできますし、より良いやり方があるような気もします。(面倒だったのでマクロすら組んでいません。)

 

手順は以下のように考えます。

まず前回定義した「拡張」を思い出します。

 

定義(異なるk項の積の総和の拡張)

(1) k1 以上の整数、nk 以上の整数とする。n 個の整数 a_{1},a_{2},3,\dots ,a_{n} から異なるk 個の数選んで作る積の総和を P_{n}(k) とする。

 

(2) 任意の 0 以上の整数 n について P_{n}(0)=1 とする。

 

(3) 0 以上の整数  k ,  n について  n\lt k のとき、P_{n}(k)=0 とする。特に任意の正の整数 k について P_{0}(k)=0 となる。

 

番号が対応しませんが、まずは(2)と(3)の  n=0 のときを初期値として見てセルに配置します。

あとは前回の漸化式を関数(+,*ぐらいで事足ります)で表現すればOKです。

 

実際やってみた

f:id:kfukui-math7:20210427072829p:plain

こんな感じです。

これは  a_{n}=n で定義される数列に対しての結果です。

各セルの値(黒字)は左上と真上の値、そして左端に並んでいる  a_{n} の値によって決まるためエラーが起きることなくどこまでも定義されます。

 

また、桁数が爆発的に増える様子が見て取れます。

f:id:kfukui-math7:20210427073654p:plain

たとえば  (n,k)=(80,36) つまり 1,2,\dots,80 のうち異なる 36 個の数を選んでできる積の総和は約 2.5×10^{79} となることが分かります。

 

次の例を見てみましょう。

f:id:kfukui-math7:20210427074111p:plain

今度は a_{n}=(-1)^{n} という循環数列にしています。

先ほどの例と比べると値が非常におとなしい様子が分かります。

各行に注目すると k が奇数のときは交互に0が現れることが予想できます。

他にも、 k=4 つまり異なる4項の積の総和の行に注目すると規則性が見られます。

 1, 3, 6, 10, 15, 21 ,28,35\dots という並びは \displaystyle \sum_{i=1}^{n}i で出てくる数ですね。

すべてに触れることは出来ませんが k が偶数のときの数の並びにはすべて「規則性」が隠されていますので観察してみると楽しいかもしれません。

 

まとめ

前回は漸化式を1文字を固定した状態で「解く」ということを試みましたが、今回は2変数の漸化式として捉え、表計算ソフトを用いて具体的な計算をしてみました。

ここからの更なる発展としては表計算ソフトを用いて見えてきた規則性を推測にとどめるだけでなく証明するということが考えられます。

もし機会があれば、またご紹介したいと思います。

 

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。